シャチハタにインクを補充する場合は、必ず専用インクを使用する必要があります。
「どこのメーカーのか分からないけど、いけそうなインクがあるので入れてみた」
という場合、大抵そのシャチハタは使用不能になるか、調子が悪くなります。
なぜ、異なるインクを入れると調子が悪くなるの?
まず最初に、正しく説明するために、「シャチハタ」ではなく「Xスタンパー」と表記することにしますね。
実は「シャチハタ」とは会社名であって、商品名ではありません。ネーム印やスタンプラリーで使うもの、会社で使う住所印など、シャチハタ株式会社から販売しているインクの入ったスタンプの商品名は「Xスタンパー」といいます。
「シャチハタのインク」はたくさんの種類がある
ひとくちに「シャチハタのインク」と言っても、実にたくさんのインクが販売されています。Xスタンパー用、スタンプ台用、朱肉用(朱の油)、サインペン用、etc.。
この記事では、Xスタンパー用のインクのみを対象としていますので、誤ってスタンプ台など他の商品にXスタンパー用インクを補充しないようご注意くださいね。
Xスタンパー用インクは「油性顔料系インク」
一般的にインクには大きく分けて、水性インクと油性インクがあります。(他にもあるかもしれませんがここでは割愛)
さらに、顔料系インクと染料系インクに分けられます。
この組み合わせだけでも、以下の4種類のインクに分けられることになります。
- 油性顔料系 ← Xスタンパー用はこれ
- 油性染料系 ← 一部のXスタンパーに使われている
- 水性顔料系
- 水性染料系
現在、Xスタンパー用インクには、油性顔料系インクが使われています。
(段ボール用など、一部商品には油性染料系インクが使われています)
油性顔料系インクとは、油性の溶剤(透明な液体)の中に、色の成分である顔料(固体)の粒が浮いているインクになります。
このインクで紙に押すと、紙の表面に顔料が残り、溶剤が紙の中に浸み込んでいきます。色の成分は、紙の表面近くに留まる(奥に染み込んだり、横に広がりにくい)ことから、発色が良く、ニジミにくい特性があります。また、顔料は耐光性にも優れていることから、シャチハタXスタンパーの標準インクとして採用されています。
誤って水性インクを入れてしまったら?
もし、Xスタンパーに水性インクを入れてしまったら、文字通り「水」と「油」ですので、中で異なる特性のインク同士がはじきあって、まともに捺印できなくなってしまいます。修復も困難になるでしょう。
誤って油性染料系インクを入れてしまったら?
もし、油性染料系インクを入れてしまったとしたら、多くの場合、インクが漏れ出してしまいます。
顔料系インクは、顔料の粒が溶剤の中に浮いているとお伝えしましたが、染料系インクは、液体そのものに色が付いています。顔料の粒を浮かせておく必要がありませんので、こちらのインクの方がサラサラした特性になっています。
インクが柔らかい分、ゴム内を素早く移動できますので、連続捺印に向いていると思われます。Xスタンパーの中でも、「段ボール用」など一部の製品には、この特性が適しているらしく染料系インクが採用されています。
ただし、液体そのものに色が付いているため、ややニジミやすい傾向があります。(染み込んだ分だけ色が広がる)
Xスタンパーの印面ゴムは、インクの特性に合わせて、インクの通り道となる穴の大きさが調整されています。顔料系インク用のゴムに、サラサラの染料系インクを入れてしまうと、インクが出過ぎてインク漏れにつながります。
逆に染料系用のゴムに顔料系インクを入れてしまうと、穴が小さいために顔料の粒が詰まってしまい、透明な溶剤成分が印面から浸み出てくることになります。
油性顔料系インクにもいろいろある
では、他社の油性顔料系インクを入れてしまった場合はどうかと言いますと、ゴム印面のインクの通り道となる穴の大きさとインクの特性が合わなければ、やはり適正な量のインクが出てきませんので、インクが出過ぎてニジんだり、詰まったりしてしまう恐れがあります。
誤ったインクを入れると修復は困難。正しいインクを入れましょう!
異なる特性の液体を混ぜてしまったわけですから、残念ながらそれを元に戻すことは困難です。コーヒーと紅茶を混ぜて、再び元に戻せと言われても難しいのと同じです。
インクを一旦絞り出してしまえば良いのではと思われるかもしれませんが、内蔵されているインクを貯めておくスポンジ状のパーツは硬い素材でできていますので、絞る事が出来ません。
商品を輸送するコスト(往復分)や、洗浄するコスト、その後の調子を考えますと、新調したほうがコストが小さくなる可能性が高いと思われます。
時々、インクがダダ漏れのXスタンパーをお持ちいただき、「変なインクは入れてないんだけどなー」とおっしゃるお客様がおられますが、「むむむ、これは明らかに違うインクが入ってるね」と心の中で思うこともしばしばですので、必ず正しいインクかどうか良く確認してから補充しましょう!
ちなみに「正しいインクを入れたのに、おかしくなった」と持ち込まれた場合は、メーカーは今後のために商品の問題点を調査する必要がありますので、インクの成分なども調査することになります。違うインクが入っていた場合は、すぐに分かりますので、間違えた場合には「間違えて違うインクを入れた」と申し出て相談することをお勧めしますよ。「間違えてない!」と主張するお客様に、科学的な調査に基づく「インクの誤注入」という報告書をお渡しするのは、こちらも気まずいので。
どのインクを入れたらいいのか分からない場合は、お持ちのXスタンパーとインクを写真に撮って、メールでお問い合わせいただいても構いませんよ。どうぞお気軽に問い合わせくださいね。
または、直接お店に持ち込んで確認すると安心ですよー。
See you! (^o^)/