市役所や区役所の窓口に提出する書類に押印が求められることがありますが、多くの場合シャチハタ印不可となっているようです。また、銀行印などとしても使うことはできません。
朱肉を使って押す印章と同じような用途に使われて、なぜシャチハタ不可とされることがあるのでしょうか?
シャチハタとは
その理由に触れる前に、まず「シャチハタ」について整理してみたいと思います。
シャチハタとは、印面からインクが浸み出すスタンプのことを差すことが多いと思います。特にネーム印を指して、シャチハタと呼ぶことが多いようです。
※正確には「シヤチハタ」は会社名であり、商品名は「Xスタンパー」と言います。
シャチハタ不可の理由
簡単に言ってしまえば、シャチハタは「ゴム印だから」だと思われます。
これに対して、シャチハタ株式会社のホームページでは、以下のように回答しています。
シヤチハタネームの使用目的上の制約(ハンコとして認められるか否か)につきましてはそれぞれの機関が定めるところにあり、弊社にて判断致しかねますが、銀行及び行政等で、公文書として使用できない局面はございます。
印字面がゴムであることが理由の1つであると思われます。
また、シヤチハタネームの発売当初(昭和40年代)、なつ印印影の滲みが大きかったことも、使用できない理由の一つと考えられますが、現在はインク並びに印字体の改良により、なつ印印影の長期保存が可能になり、又、ニジミの少ない製品となっております。
尚、製品の取扱説明書並びにカタログには“印鑑証明には使用しないで下さい”との記載を行いご理解をお願いしております。
※一部の企業並びに一部銀行の職場内におかれまして、別注印を重要印としてお使い頂いているケースもございます。
Yahoo!知恵袋の情報は間違いだらけ
Yahoo!知恵袋などで、「シャチハタ不可の理由」について、「インクが薄くなるから」とか「にじみがひどいから」などと回答されている例を見かけますが、それは商品の知識を持たない人が書き込んだ誤った情報です。
40年以上前の製品にはそれが当てはまるかも知れませんが、現状に即した適切な解答とはいえません。(シャチハタ社以外が販売している類似品は、この限りではありません。)
シャチハタのネーム印には、油性顔料系のインクが使用されており、以前のインクよりもニジミは少なくなり、またインクの保存性も非常に高くなっています。綴じ込み印影保存性は20年以上(推定)となっており、もはやインクよりも紙の保存性の方が問題になってくるレベルとなっています。
シャチハタはゴム印の一種
軟らかいゴムで出来たものと、硬質の素材でできた印鑑では、印影の安定性が違います。シャチハタネーム印はゴム印の一種といえますので、力の入れ方によっては、ゴムが変形して同一と判断できない印影になるケースも考えられます。
つまり、朱肉を使用する印章にくらべて、シャチハタは証拠能力が低いとの観点から、証明用の印章として採用されにくいという側面があるのかも知れません。
証拠能力が重要でない場面でもダメと言われるのはなぜ?
市区町村の窓口などで、証拠能力がそれほど重要と思われない場面ならば、シャチハタを認めても良さそうなものですが、そのように緩和されないのは、それが慣習となっていて、議論がされていないだけではないでしょうか。
最近は、捺印に関してきちんと議論が行われ、制度が改められた事例も出始めています。
住民票の申請に関する認印の捺印が見直されて、シャチハタどころか捺印そのものが不要になっている例も多数あります。